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ラプラス変換とフーリエ変換

 

 

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はじめに 

抵抗、コンデンサ、コイルを用いた回路があったとして、その回路での電流の振る舞いなどを知りたい場合には微分方程式を解かなければなりません。

微分方程式を解くのは結構面倒なことなのですが、tで微分することをsを乗じることに対応させ、tで積分することをsで商を取ることに対応させたら代数方程式となり簡単に解けてしまいました。

 この法則を厳密に数学として取り扱ったのがラプラス変換だと言えます。

 

 

フーリエ変換は、ある波形を多数の周波数波形の線形和で表現することに相当します(これは実際にはフーリエ逆変換。詳しくは以下記事)。

s0sem0y.hatenablog.com

信号処理の基本的となっており、科学技術計算の分野で代表的な話題の1つです。

 

 

全く異なって見える2つの手法は、実はかなり似ており、

ある条件のもとでは完全に等価なものになります。

 

 

ラプラス変換とフーリエ変換

フーリエ変換

フーリエ逆変換の式は

 

f(t)=\frac{1}{2π}\int_{-∞}^{∞}F(ω) \exp (iωt)dω

 

で表されます。これは時間波形f(t)が係数F(ω)を持つ周期波形exp(iωt)の線形和で表されることを表現しています。ωは連続的に値を移動するので、線形和と言っても実際には積分の形になります。\frac{1}{2π}は、周波数fと角周波数ωの間に

 

2πf=ω

 

の関係があるために生じてくるものであり、積分変数の変換を行えば消し去ることが出来ます。(その代わり、\expの中身を書くのが面倒になる)

 

フーリエ変換の式は、フーリエ逆変換をした後にフーリエ変換した場合に、ちゃんと元に戻るような変換でなければならず。

 

F(ω)=\int_{-∞}^{∞}f(t)\exp (-iωt)dt

 

となります(実際には定義の順番は逆だが、そんなことはどっちでもいい)。

 

フーリエ変換というのは元々、周期的な波形を展開するフーリエ級数展開を拡張したものです。どのような拡張かというと、周期的でない波形を周期無限大の周期的波形と見なすことで、フーリエ級数展開を可能にするという拡張です(その結果積分になってしまった)。

 

このような拡張がされた以上、f(t)は周波数が無限大にしても周期的な波形であることを認めなければなりません。f(t)t: −∞→∞まで見てやれば紛れもなく一周期が観測できるということです。

 

ところが、f(t)がもしt=∞(あるいはt=−∞)の遥か彼方において値がやたらめったら大きかった場合はどうなるでしょうか。恐らくフーリエ変換の以下の積分

 

F(ω)=\int_{-∞}^{∞}f(t)\exp (-iωt)dt

 

は発散してしまうでしょう。1+1+1でさえ無限に繰り返せば∞に発散するのですから、f(t)が変に大きな値を撮り続けるようでは、間違いなく発散してしまいます。

 

しかし\exp (-iωt)の方はあくまで周期的な関数であり、正と負の値を均等に持ちます。

もしも\exp (-iωt)f(t)との積を取った場合に、正負が均等にバラければ、積分を取った時無限大に発散することがなくなるかもしれません。

予め明らかに収束するであろう条件は

 

F(ω)=\int_{-∞}^{∞}f(t) \exp (-iωt)dt

 

においてf(t)が無限の彼方で0に収束しているというものです。

途中からtによる積分が打ち切られるような状況にならば、その時点で積分の値を収束させることになります。

(本当はもっと適した定理はあるが、ラプラス変換との繋がりはここにある)

 

ラプラス変換

F(ω)=\int_{-∞}^{∞}f(t) \exp (-iωt)dt

 

を収束させるべく考えられることは、f(t)が無限の彼方で0に収束していることです。

これを簡単に可能にしてしまう方法があります。

 \exp(-at)を乗じてしまうことです。aは十分に大きな正の定数としてしまえば、無限の彼方でかなり強く0に収束させることが出来ます。そしてt0未満の方はいっそのこと無視してしまって、上記の積分の代わりに

 

G(ω)=\int_{0}^{∞} \{ f(t) \exp (-at) \} \exp (-iωt)dt

 

という積分を考えるのです。

0未満を無視するのはあまりにもいきなりですが、実データの波形においては計測開始地点がt=0なんだと思えばいいでしょう(かなりいい加減ですが)。急速に収束させるために余計な関数を乗じてしまったため、本来のフーリエ変換ではなくなってしまいましたが、少なくとも上の積分は必ず存在します。

 

通常s=a+iωとおいて(片側)ラプラス変換は

 

G(s)=\int_{0}^{∞} f(t) \exp (-st)dt

 

と表されます。見た目上は何となくフーリエ変換よりもスッキリしているように見えるでしょう。

これを使っていろいろ式変形をしたあとに、s=iωを代入(すなわちa=0を代入)することで、普通のフーリエ変換に戻ってくることが出来ます。

制御工学などの分野では、ラプラス変換で伝達関数を求めた後に、s=iωという操作を施こしますが、本質的にはフーリエ変換による周波数解析をしているに他なりません。

 

線形性

電気回路の解析にラプラス変換の源流が使われたのはなぜでしょうか。

それは電気回路の線形性と深く関わっています。

 

抵抗、コイル、コンデンサなどで構築される電気回路は、電圧源や電流源が複数あったとしても、それらが個々に存在した時の回路の振る舞いを個別に求めて和を取れば解析ができます。(重ね合わせの原理と呼ばれる)

 

重ね合わせの原理とは線形性が満たす性質そのものです。

フーリエ解析は、いろんな周波数の重ね合わせ(線形和)によって任意の波形を表現します。

線形電気回路の微分方程式は当然、線形微分方程式であり、解が適当にいくつか見つかった場合には、それらの和も必ず解になります。

 

線形微分方程式の解を、無限のパターンの周波数の波形を準備しておき、解に代入してしまえば、必ず解になっているはずです(なぜなら無限のパターンの周波数の波形を適当に重ねあわせれば任意の波形を構築できるため。そして一般解は特解の和であることが保証されている)。あとは解になりうる周波数の波形の係数を求めるだけです。

 

無限のパターンの周波数の波形を代入することは、微分方程式の解を(とりあえず)フーリエ変換してしまうことに相当します。この時点で係数はまだ定まっていません。

この操作はラプラス変換(フーリエ変換の拡張)によっても可能です。ラプラス変換

 

G(s)=\int_{0}^{∞} f(t) \exp (-st)dt

 

において、tで微分をするとsが出てきて、積分すると\frac{1}{s}が出てきそうです。

これらの置き換えルールを使うと、あとはフーリエ係数を求めるだけであるので、電気回路の解析が代数方程式になるという仕組みなのでした。

 

 

 

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